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口腔機能発達不全症 一般歯科医院での捉え方と考え方

著:nishiyama /

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1.口腔機能発達不全症の診断基準

日本歯科医学会では、

1.離乳完了前②離乳完了後(18ヶ月以降)でそれぞれ見るべきポイントが違うことが明らかにされています。
また、診断基準は「口腔機能発達不全症チェックリスト」における「食べる機能」、「話す機能」のC項目において2つ以上のD 該当項目にチェックがついたものを「口腔機能発達不全症」と診断します。
また、離乳完了前は C-1~C-9 を、 離乳完了後はC-1~C-6のC項目を1つ含むこととします。

3.口腔機能発達不全症の評価
①離乳完了前

【「食べる」 機能発達不全】
1.哺乳:
視診による先天性歯(先天歯、出生歯)の有無、口唇・歯槽の形態異常の有無 舌小帯の異常の有無を確認します。また乳首をしっかり口に含むことができているか否か、 授乳時間、 哺乳量と授乳回数について確認します。

2.離乳:
・通常乳歯の萌出前に離乳を開始している場合、 首の据わりを確認します。
・スプーンを舌で押し出す状態になっていないか確認します。

【「話す」機能発達不全】
視診による口唇閉鎖不全の有無を確認します。 (安静時の口唇閉鎖の有無)。

【「その他」の機能発達不全】
栄養 (体格):極端な身長・体重の異常がないかを確認する。 必要に応じて、カウプ指数による評価(肥満、肥満傾向、正常範囲、 やせぎみ、 やせ) を行います。

【 その他】
・ロ腔周囲に過敏があるか否かを確認します。
原始反射特に口腔周囲にみられる口唇探索反射や吸てつ反射が残存している様子がみられるか確認します。

・指で口唇の近くを刺激すると頭を回して追いかける行動や口の中に指などを入れると吸い付く行動がみられるか確認します。

②離乳完了後 (18か月以降)
口腔機能発達不全症を診断・評価する検査に用いられている検査として、

・口唇閉鎖力検査
・舌圧検査
・咬合力測定検査
・咀嚼回数測定検査

などが挙げられ、そのなかで口唇の閉鎖力検査と舌圧検査は、 検査方法 検査結果の評価ともに適切な指標があり、いずれも重要です。

※日本歯科医学会
口腔機能発達不全症に関する
基本的な考え方
(令和6年3月)

2.一般歯科医院での役割

一般歯科医院は、地域に根ざした医療機関として、子どもたちの歯と口腔の健康を長期的に見守る立場にあります。専門的な小児歯科や矯正歯科の診療が必要な場合もありますが、一般歯科医院だからこそできることがあります。それは、子どもの成長をじっくりと見守りながら、定期的に口腔内の状況を観察し、口腔機能発達不全症に対応することです。

3.子どもの成長を見守る重要性

子どもは成長とともに口腔機能も発達していきます。一般歯科医院では、定期的な検診を通じて子どもの口腔の状態を確認し、発達不全の兆候を早期に発見することが可能です。例えば、歯の生え方や咬合状態、舌の動き、発音の異常など、様々なポイントをチェックすることで、問題が深刻化する前に対処することができます。

4.継続的なケアと教育

口腔機能発達不全症に対応するためには、継続的なケアが欠かせません。一般歯科医院では、定期的な検診を通じて、子どもの口腔の状態を記録し、必要に応じて適切な指導や治療を行うことができます。また、親や子どもへの教育も重要です。口腔機能の発達には、日常生活でのケアが大きく影響します。正しい歯磨きや食事の取り方、発音の練習など、家庭でできるケアをしっかりと教えることで、口腔機能の発達をサポートします。

5.早期発見と対処の重要性

口腔機能発達不全症は、早期に発見して適切な対処を行うことで、将来的な問題を防ぐことができます。例えば、舌の動きが悪い場合、発音や食事に支障をきたすことがあります。この場合、MFTを行うことで改善が期待できます。また、歯の生え方に問題がある場合、早期に矯正治療を行うことで、顎の発育とともに、正常な発育を促すことができます。

6.家族との連携

一般歯科医院では、家族との連携も重要です。子どもの口腔機能の発達を見守るためには、家庭でのケアや習慣も非常に重要です。例えば、正しい歯磨きの方法や、噛む力を鍛えるための食事指導など、家庭でできるケアをアドバイスすることが求められます。親子で協力しながら、子どもの口腔機能をサポートしていくことが大切です。

まとめ

口腔機能発達不全症は、子どもの成長に大きな影響を与える問題ですが、一般歯科医院だからこそできる対応が多くあります。定期的な検診を通じて早期発見し、適切な対処を行うことで、将来的な問題を未然に防ぐことができます。

一般歯科医院は、地域に根ざした医療機関として、子どもたちの成長を見守りながら、口腔機能発達不全症に向き合うことができます。これからも、地域の健康を支える存在として、子どもたちの健やかな成長をサポートしていくことが求められます。

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著者紹介

nishiyama

歯科大学歯科衛生士学科卒業後、小児患者や障害者の歯科診療体制や、歯科恐怖症患者について学ぶため歯科大学付属の専攻科へ進学し口腔保健学学士を取得。その後は小児歯科専門歯科医院にて勤務。歯科衛生士ライターは「歯科に苦手意識を持っている人が媒体を通して理解し、歯科を身近に感じることで歯医者に行ってみよう」という気持ちになることを後押ししたいという思いから学生時代に始めた。