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口腔機能発達不全症の見分け方 ーMFTってなに?ー

著:nishiyama /

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口腔機能発達不全症とは?

口腔機能発達不全症とは、2018年に保険適用になった病名です。
特に18歳未満の子どもで生まれつきの障害がないにも気わらず、口腔機能が正常に発育しない状態を指します。具体的には、噛む、飲み込む、話す、呼吸するなどの基本的な口腔機能がうまく働かない、または発達が遅れることが特徴です。この症状が見られた場合には、早期発見と適切な治療が重要です。
※公益財団法人 8020推進財団「口腔機能発達不全症ってなぁに?」より参考

口腔機能発達不全症の主な症状

口腔機能発達不全症の症状は多岐にわたりますが、以下のような兆候が見られることが多いです。

①噛む力が弱い
食事中に噛む力が弱く、食べ物をうまくかみ砕けないことがあります。これにより、食べ物を飲み込むのに時間がかかる、または消化不良を引き起こすことがあります。

②飲み込みが難しい
飲み込む際にむせる、飲み込みに時間がかかる、あるいは飲み込む動作がスムーズでない場合は口腔機能発達不全の可能性があります。

③発音がはっきりしない
言葉を発する際に発音が不明瞭で、保護者や周囲の人が気づきやすいポイントでもあります。特に舌を使う、「さ行」や「た行」「ら行」の発音が難しい場合があります。

④呼吸の問題
口呼吸が主であり鼻呼吸ができない場合や、睡眠時にいびきをかく傾向が見られることもあります。

口腔機能発達不全症の原因

口腔機能発達不全症の原因は多岐にわたります。遺伝的要因、環境要因、生活習慣などが複合的に影響を及ぼすとされています。

①遺伝的要因
家族に口腔機能発達不全症の患者がいる場合、遺伝的に影響を受けることがあります。

②環境要因
幼少期に指しゃぶりや長時間の哺乳瓶使用が続くと、口腔機能の発達に影響を与えることがあります。

③生活習慣
食生活や姿勢なども原因の一つとされています。特に、硬い食べ物を避ける食生活は、噛む力の発達を妨げることがあります。

MFT(口腔筋機能療法)とは?

MFTは、口腔機能を改善するためのトレーニングです。これは、口腔筋肉のバランスを整え、正常な機能を回復させることを目的としています。

MFTの基本原理

MFTは、口腔筋肉の強化と協調性を高めるための一連のエクササイズから成ります。これにより、噛む、飲み込む、話す、呼吸するなどの基本的な口腔機能を改善することができます

MFTのエクササイズ方法

MFTには様々なエクササイズがありますが、以下のようなものが一般的です。

❶舌のトレーニング
舌を上顎に押し付ける、舌を左右に動かすなどのエクササイズ

❷唇のトレーニング
唇を閉じる、唇を引き締めるなどのエクササイズ

❸頬のトレーニング
頬を膨らませる、頬を吸い込むなどのエクササイズ

MFTの効果とメリット

MFTを継続することで、以下のような効果が期待できます。

①歯並びの改善
口腔周囲の筋肉のバランスを整えることで、歯列不正や噛み合わせの問題を改善しやすくなります。

②呼吸の改善
鼻呼吸を促進し、口呼吸を減少させることで、睡眠時無呼吸症候群やいびきを軽減する効果があります。

③発音の向上
舌や口の筋肉の機能を改善することで、正しい発音へ導きます。

④消化機能の改善
適切な咀嚼と唾液の分泌を促進することで、消化機能が向上します。

⑤顔の対称性と美観の向上
顔面筋のバランスを整えることにより、顔の対称性が改善され、より自然で美しい顔立ちになります。

⑥矯正治療の後戻り防止
歯列矯正中に行うことで効果を最大化し、矯正治療後の後戻りを防ぐ助けとなる場合もあります。

⑦口腔衛生の向上
正しい舌位や口の閉じ方を習得することで、う蝕や歯周病のリスクが低減します。

⑧全身の健康への影響
正しい呼吸法や食べ方が身につくことで、全身の健康にも良い影響を与えます。
口腔機能発達不全症の診断方法

口腔機能発達不全症の診断方法

口腔機能発達不全症の診断は、歯科医師による診断が確定した場合、MFTを含む包括的な治療プランが策定されます。

以下のような流れで診断を行います。

❶問診
症状や生活習慣について詳細に聞き取ります。

❷視診
口腔内の状態を観察します。

❸機能検査
噛む力、飲み込む力、発音などの機能を評価します。実際にりんごやクラッカーなど固い食べ物を噛んでもらい、映像に収める場合もあります。

まとめ

口腔機能発達不全症は、早期発見と適切な治療が重要です。特にMFTは、口腔機能を改善するための効果的な方法として取り入れている歯科医院もあります。 次回はMFTの具体的なトレーニング方法について詳しくご説明します。

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著者紹介

nishiyama

歯科大学歯科衛生士学科卒業後、小児患者や障害者の歯科診療体制や、歯科恐怖症患者について学ぶため歯科大学付属の専攻科へ進学し口腔保健学学士を取得。その後は小児歯科専門歯科医院にて勤務。歯科衛生士ライターは「歯科に苦手意識を持っている人が媒体を通して理解し、歯科を身近に感じることで歯医者に行ってみよう」という気持ちになることを後押ししたいという思いから学生時代に始めた。