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小児の近代病「口腔発達不全症」の治療と予防にフォーカス 代表理事井上敬介先生に聞く! 日本小児口腔発達学会発足のワケ
- 著:井上 敬介 先生 / Keisuke Inoue DDS Ph.D. /
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はじめに
Dentwave編集部:それでは、インタビューを始めさせていただきます。本日はお時間をいただき、誠にありがとうございます。今回はNPD(日本小児口腔発達学会)についての紹介記事を作成するため、いろいろとお伺いさせていただきます。ではまず、井上敬介先生について簡単に自己紹介をお願いできますでしょうか。
井上先生:愛知県常滑市でアイデンタルクリニックの理事を務めております井上敬介と申します。また、日本小児口腔発達学会(以下、NPD)の代表理事をさせていただいております。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
Dentwave編集部:井上先生は地元で4代目の歯科医院を開業されていると伺いましたが、元々インプラントや補綴専門医としてのご活躍を拝見させていただいてました。そこから、小児歯科や子どもの口腔発達医療へとシフトされた経緯についてお伺いしたいのですが、どのような背景があったのでしょうか?

小児分野への転換について
井上先生:NPDのメインテーマは、子どもたちの発達と発育に注目した医療の研究・提供なのですが、私自身のキャリアの変遷を振り返ると、もともとはいわゆる伝統的な歯科医療に従事していました。むし歯や歯周病、欠損歯で困っている患者さんに対して、痛みを取り除いたり、入れ歯やインプラントで食べられるようにしたりといった治療を行っていました。
Dentwave編集部:確かに、歯科医療の基本はそこにあるように感じますね。
井上先生:ただ、時代が進むにつれて、歯科医療全体が大きく変わりつつあることを感じるようになりました。特にむし歯や歯周病は予防可能な時代になり、治す医療から防ぐ医療へと移行しています。そして、その変化の中で明確に見えてきたのが、現代の子どもたちにおける新たな課題です。具体的には、口腔機能の低下や歯並びの悪化などですね。
Dentwave編集部:時代の変化とともに、歯科医療が求められる役割も変わってきたということですね。
井上先生:その通りです。現場において、親御さんや患者さんからのニーズも変わってきていると感じます。昔は痛みを取る、食べられるようにするという治療がメインでしたが、今は歯並びの予防や口腔機能の発育に関心が向けられています。しかし、新しい分野の治療にはエビデンス(科学的根拠)がまだ整備されていないものも多いんです。そうした課題に取り組むため、同じ志を持つ歯科医師たちと勉強を重ねたのがNPD設立のきっかけです。
学会設立の背景
Dentwave編集部:学会設立までの経緯について、さらに詳しく教えていただけますか?
井上先生:NPDの原点は、スタディグループ(勉強会)の活動です。同じ現場で悩みを抱える歯科医師たちが集まり、新しい知識を共有し合いながら学んできました。当初は学会を作ること自体が目的ではなかったのですが、徐々に勉強会を発展させ、エビデンスを構築し、社会に還元する仕組みを作りたいという声が高まり、最終的に学会の設立に至りました。
第1回日本小児口腔発達学会の様子



Dentwave編集部:学会の設立に際して、周囲の反応はいかがでしたか。
井上先生:正直なところ、既存の学会や医療業界全体では、新しい取り組みに対して保守的な声も少なくありませんでした。しかし、私たちのメンバーの多くは現場で患者さんと向き合っている人間ばかりです。そのため、目の前の問題を解決したいという熱意が非常に強く、賛同する方々も多かったです。
NPDのビジョンと活動内容
Dentwave編集部:NPDの現在の活動内容や、掲げているビジョンについて教えてください。
井上先生:
NPDは、大きく3つの目標を掲げています。
1つ目は、小児口腔発達医療の研鑽と研究です。最先端の医療技術や知識を国内外から取り入れ、学び続けることを目指しています。
2つ目は、エビデンスの構築。つまり、研究やデータを通じて小児口腔発達医療を科学的に証明し、医療界全体へ提案していくことです。 3つ目は、知識の継承。次世代の歯科医師や多職種に向けて、口腔発達医療の重要性を広く啓発していきたいと考えています。
今後の展望と学会イベント
Dentwave編集部:非常に壮大なビジョンですね。最後に、今後の予定についても教えていただけますか。
井上先生:
来月、2月には第2回学術大会を開催します。特別講師としてオーストラリアからシャロン・ムーア先生をお招きし、小児の睡眠と口腔発達について講演をいただきます。また、会員の皆さんによる研究発表も多数予定しています。今回のテーマはNow or Never(今しかない)。まさに、成長期の子どもたちの健康を守るため、今こそ行動しなければならないというメッセージを込めています。
Dentwave編集部:ありがとうございます。非常に貴重なお話をお聞きすることができ、大変有意義な時間となりました。今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます。

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