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地域医療に貢献 公立小学校に歯科用ユニットを設置! その取り組みと新しい可能性とは?

著:副島 隆太 先生 /

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はじめに

Dentwave編集部: 副島先生のFacebookを拝見し、小学校に歯科用ユニットを設置されたという投稿を拝見しました。これはとても大きなニュースだと思い、ぜひお話を伺いたいと思いました。

事前に、Dentwaveの会員の皆様に学校歯科検診についてのアンケートを実施しました。その結果を先生にも事前にご覧いただいていると思いますが、率直なご感想をお聞かせいただけますか?

副島先生: 学校歯科検診を行っている歯科医院は全体の60%ほどで、残りの40%ほどは実施していないという結果でしたね。

この実施率は、歯科医院の体制や地域の事情による部分が大きいのかなと思いました。また、学校歯科検診を実施している歯科医院の92%ほどが、検診で最も重視している項目として「う蝕の有無」と回答していました。その他の項目と比べると、この項目が圧倒的に重視されている印象でした。

Dentwave編集部: なるほど。先生の医院では、学校歯科検診をどのような体制で行われていますか?

副島先生: うちには複数のドクターが在籍しているので、基本的に学校検診には私が行くようにしています。その際、私の診療の予約を調整して対応しています。ただ、1日丸ごと休診にするのは難しいため、学校の都合に合わせて何回かに分けて検診を行う形にしています。

歯科用ユニット設置の背景と目的

Dentwave編集部: ありがとうございます。では、本題に入りますが、小学校に歯科用ユニットを設置された経緯や背景、目的についてお聞かせいただけますか?

副島先生: 私の医院がある雲仙市は田舎で、保護者の方の口腔ケアに対する意識がそれほど高くないと感じていました。特に共働きの家庭が多く、子どもの口の中をしっかり見ていないケースが多いんです。

そこで、少しでも子どもの口腔状況を把握できるように、学校で口腔内写真を撮れる環境を整えたいと考えました。もちろん、写真を撮るだけならユニットは不要ですが、「歯科医院を身近に感じてもらう」ために、ユニットに座る経験を提供したいと考えたんです。

学校に歯科ユニットがあれば、子どもたちが歯科に対する恐怖心を減らし、歯科医療をより身近なものと感じてもらえるのではないかと考えました。

導入後の反応と課題

Dentwave編集部: 実際に導入されて、児童の反応や変化はありましたか?

副島先生: 子どもたちは「うちの学校には歯医者の椅子がある!」と話題にし、学校全体が関心を持つようになりました。また、地域の新聞にも取り上げられ、他の小学校から「うちでも導入できませんか?」といった問い合わせも来るほどでした。

また、実際に口腔内写真を撮る際も、ユニットに座ってもらうことで撮影しやすくなりました。ライトも使えるので、より正確に口腔内の状況を確認できるようになりましたね。

Dentwave編集部: なるほど。導入にあたって、最も大きなハードルは何でしたか?

副島先生: やはり学校側の許可を得ることでしたね。最初は校長先生や保健の先生に説明し、理解を得るために何度も話し合いました。公立の小学校の場合、予算の問題があるので、最終的には私の医院が移設費用を負担することで実現しました。ユニットに関しては、前任の校医の先生が歯科医院をちょうど廃業されるとのことだったので、「捨てるくらいなら、子どもたちのために活用できませんか?」と交渉して、いただきました。

Dentwave編集部: 実際、ユニットを設置してどんな歯科検診を行っているんですか?

副島先生: 私がフォーカスしているのは「口腔機能発達不全症」です。現在、この地域でも虫歯の発生率は減少傾向にあります。一方で、子どもたちの歯列に問題が見られるケースが増えていて、今回のデータでも全体の約60~70%の児童に何らかの歯列の問題があることが分かりました。
そのことからも、検診の方法や視点を見直す必要があると強く感じています。

Dentwave編集部: 私が子どもの頃の歯科検診は、ミラーでざっと口の中を見て終わるという流れでした。具体的にどのような検診を行っているのでしょうか?

副島先生: う蝕、歯列のチェック、機能の問題があれば聞いています。あとは上下の歯列の写真と、頬面からの写真を撮って保護者の方に送っています。
本来であれば、ミラーや消毒済みの器具を使用して詳細な検査を行いたいところですが、現在の感染対策の観点から、ディスポーザブル(使い捨て)のミラーを使用し、できる範囲で診査を行っています。

検診の目的は、単に虫歯の有無を確認することではなく、子どもたち自身や保護者に「自分の歯列を知ってもらうこと」です。そのため、学校側の協力を得て、各家庭へ保健士さんがタブレット経由でデータを送信しています。

学校の先生の協力

Dentwave編集部: 保健士さんや、学校の先生の協力が不可欠だと思うのですが、副島先生から学校の先生方にお話ししたことはありますか?

副島先生: フッ素洗口の効果もあるんでしょうけど、虫歯(う蝕)が極端に減ってきているんですよ。これって多分、認知だと思うんですよね。まだ多分、学校や保護者の方も口腔機能発達不全症を知らないと思っています。実際今回の検診でも15%の人しか知らなかったわけですから。そこで、「今後、10年後、子どもたちが成長したときに『訓練をしておいてよかった』と思えるような取り組みが必要ではないか」と、熱意を持ってお話ししました。結果として、学校側も理解を示し、現在の取り組みがスタートしました。

Dentwave編集部: 歯科検診以外に、学校に対して行っている取り組みはありますか?

副島先生: 歯科を身近に感じてもらうために、「歯科の授業」を全学年に実施しています。
1年生に関しては、保護者参観のときに保護者の方を含めた授業を行っていて、「お子さんで、口がポカーンと開いていると思いますか?」と聞くと、保護者の方は「100%口が空いてます」と手を挙げますね。

Dentwave編集部: 歯科検診や授業に取り組みを始めて、何か具体的な変化、そして今後の展望を教えてください。

副島先生: やっぱり子どもたちが歯に意識を持ち始めたのか、口腔機能発達不全症に対しての点数が増えたっていうのと、子どもの矯正治療の数が倍くらいに増えましたね。
今後の展望に関しては、まだ1年ということもあるので、この取り組みを継続していくことですね。あとは学校での「あいうべ体操」の導入をしていきたいですね。歯科医院での教育って、なかなか難しいのが現状なので、でもこれって周りが全部変われば当たり前になるんですよね。歯科医院に通う習慣を作るために、学校での日々の取り組みを出来るようにしていきたいと思っています。

素晴らしいですね! 最後に、この記事を読まれる歯科医師の方々へメッセージをお願いします。

今後の展望と歯科医師へのメッセージ

副島先生: 「地域医療に貢献したいけれど、何から始めればよいかわからない」という方は多いと思います。でも、重要なのは、まず行動することです。

「どうせ無理だろう」「断られるかもしれない」と考えていたら、何も始まりません。最初の一歩を踏み出すことが大切です。

例えば、今回の学校歯科ユニットの設置も、計画を完璧に立ててから動いたわけではなく、実際に話をしながら調整を重ねて進めてきました。

地域の子どもたちの健康を守るために、ぜひ一歩踏み出してみてください!

Dentwave編集部: 本日は貴重なお話をありがとうございました!

本記事が、地域医療に貢献したいと悩む多くの方々にとって、ひとつのきっかけになることが出来れば幸いです。また歯科医療×地域のさらなる発展に、少しでも貢献できれば幸いです。

Introduction

著者紹介

副島 隆太 先生

IPSG会員
ICOI会員
日本口腔インプラント学会会員
日本歯科顕微鏡学会会員
顎咬合学会会員
かみ合わせ認定医
博多咬合勉強会
BPSクリニカル認定医